新任役員のための理事会Q&A
- 正行 宮原
- 2024年10月24日
- 読了時間: 7分
更新日:2024年12月22日
【管理組合役員が知っておくべき基本知識】
理事会を成功させるための区分所有法と標準管理規約の理解

Q1 管理組合の目的は何ですか?
A1
建物の共用部分や敷地を維持管理することが管理組合の目的です。
<ポイント>
管理組合の運営は区分所有者全員が参加して、その意見を反映させることにより成立します。
<参考>
区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。(区分所有法第3条)
Q2 理事長はどんな権限がありますか?
A2
理事長は管理組合を代表し業務を統括しますが、その職務は規約、使用細則、総会や理事会の決議などにより定められた事項です。自らの判断で決定し実行するような権限はありません。
<参考>
本来、区分所有者全員で建物の管理をしなければなりませんが、全員が管理に直接携わることは不可能です。そのため区分所有法では一定の者に管理を任せる仕組みを認め、区分所有法第25条で管理者を選任できるとしています。標準管理規約では理事長をこの管理者と明記しています。
Q3 理事になったらどのような仕事をすればいいでしょうか?
A3
理事は総会の決定事項や管理規約で定められた業務を執行します。
<参考>
すべての決定は話し合いにより決まります。マンションの権利義務については、区分所有法やマンション管理適正化法等の法律に従います。マンションの管理については、各マンションの管理規約および使用細則に従います。理事は住民の代表としてトラブルを解決したり、理事会で総会議案を作成します。
管理会社が適正に仕事をしているかチェックすることも必要です。『費用は適正なのか?』『組合員からの不平不満はないか?』『修理は適切に行われたか?』など。
Q4 第一回目の理事会では何をしたらいいでしょうか?
A4
1年間の方針を明確にして優先順位をつける計画をしてください。
<例>
・第一回目の理事会開催日を決める ・役職を決める
・理事会開催頻度の確認 ・引継ぎ
・懸案事項を確認する ・理事会議事録の確認
・理事会で協議していく内容の確認 ・工事契約書・点検報告書
・事業計画と事業予算を確認する ・保険内容を確認する
・広報の確認 ・防火管理者の選任
・役員間の連絡先(電話・メール)の確認
・建物設備の見学 ・過去の修繕履歴を確認する
・管理規約の内容を確認する ・通帳の確認
Q5 定期的な理事会では何をしたらいいでしょうか?
A5
月次報告の確認と今期の課題および実施の見通しを確認してください。
<例>
・管理費等の滞納 ・会計担当理事からの報告確認
・今後の予定と課題確認 ・保守点検の報告
・各理事からの報告 ・理事会申請事項確認(区分所有者のリフォーム申請)
・トラブル対応 ・総会で承認された事業計画の進捗を確認
Q6 賃貸入居者(賃借人)を理事に選任できますか?
A6
組合員ではないので選任できません。
区分所有法は、全員で建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成するとしています。(区分所有法第3条)
標準管理規約では、役員の資格を区分所有者である「組合員」と限定しています。この組合員とは区分所有法第3条の団体を構成員を指します。
<参考:役員の成りて不足について>
役員の成りて不足から役員の資格を組合員に限定しない方法を考えてみます。標準管理規約では、役員要件を「組合員」としているので、標準管理規約をそのまま使用する場合は、配偶者や同居する親族等は役員になれないことになります。役員資格の拡大を認めるためには、規約にその旨を定めることになります。この「組合員」要件を外すことにより、同居する親族や外部専門家を役員とすることも可能となります。
Q7 理事長を総会で直接選任できますか? それとも理事会で選任しますか?
A7
どちらの方法も可能です。
<参考>
区分所有法第25条では、管理者(理事長)は総会で選任し解任することができると規定され、規約で別段の定めも可能とされています。標準管理規約第51条では、理事及び監事は、組合員のうちから、総会で選任するとしたうえで、理事長、副理事長及び会計担当理事は理事会により選任するとしています。
従って、標準管理規約に従った規約を制定している場合は、理事が総会で選任された後に理事会で理事長等を選任することとなります。
Q8 理事会開催の手続きは?
A8
理事会は理事長が招集し議長は理事長が務めます。理事会の会議は理事の半数以上が出席しなければ開催することができず、その議事は出席理事の過半数で決めるとしています。
<参考>
・理事の同意を一定数以上得られたら、理事長以外の理事が理事会の招集を理事長に請求できます。 (標準管理規約第52条2項) 一定の数は規約で定めますが一般的には全理事の1/4あるいは1/3です。
・監事は、議決権はありませんが、出席は義務付けられているところです。
「監事は理事会に出席し、必要があると認めるときは意見を述べなければならない」
(標準管理規約第41条4項)
・理事会成立要件は理事の半数以上の出席です。監事の出席は理事会成立要件になりません。(標準管理規約第53条1項)
Q9 理事会は委任状があれば半数に満たない出席でも開催可能?
A9
理事会の会議は理事の半数以上が出席が必要です。
<参考>
標準管理規約(単棟型)コメント
第53条関係
① 理事は、総会で選任され、組合員のため、誠実にその職務を遂行するものとされている。このため、理事会には本人が出席して、議論に参加し、議決権を行使することが求められる。
② したがって、理事の代理出席(議決権の代理行使を含む。以下同じ。)を、規約において認める旨の明文の規定がない場合に認めることは適当でない。
④ 理事がやむを得ず欠席する場合には、代理出席によるのではなく、事前に議決権行使書又は意見を記載した書面を出せるようにすることが考えられる。これを認める場合には、理事会に出席できない理事が、あらかじめ通知された事項について、書面をもって表決することを認める旨を、規約の明文の規定で定めることが必要である。
⑤ 理事会に出席できない理事に対しては、理事会の議事についての質問機会の確保、書面等による意見の提出や議決権行使を認めるなどの配慮をする必要がある。
また、WEB会議システム等を用いて開催する理事会を開催する場合は、当該理事会における議決権行使の方法等を、規約や第70条に基づく細則において定めることも考えられ、この場合においても、規約や使用細則等に則り理事会議事録を作成することが必要となる点などについて留意する必要がある。 なお、第1項の定足数について、理事がWEB会議システム等を用いて出席した場合については、定足数の算出において出席理事に含まれると考えられる。
Q10 理事会で決められることは、どのようなことですか?
A10
通常は管理規約に理事会の議決事項を定めています。
標準管理規約では、54条で以下の事項を理事会の議決事項としています。
(1)収支決算案、事業報告案、収支予算案及び事業計画案 →総会決議事項
(2)規約及び使用細則等の制定、変更又は廃止に関する案 →総会決議事項
(3)長期修繕計画の作成又は変更に関する案 →総会決議事項
(4)その他の総会提出議案 →総会決議事項
※上記は理事会が案を決めた後に総会の議決を経なければなりません。
(5)専有部分の修繕等に定める承認又は不承認
(6)新年度予算案承認までの間の経費の支出等に定める承認又は不承認
(7)管理費等の徴収に係る法的措置に定める未納の管理費等および使用料の請求に関する訴訟その他法的措置の追行
(8)理事長の勧告及び指示等を発するための決議
(9)総会から付託された事項
(10)災害等により総会の開催が困難である場合における応急的な修繕工事の実施等
※上記以外にも理事長、副理事長、会計担当理事の選任や臨時総会および理事会の招集などがあります。
Q11 理事会議事録には署名が必要ですか?
A11
総会の議事録規定を準用します。
議長および議長の指名する2名の出席者が署名をします。
<参考>
現在の標準管理規約(令和3年9月以降)では署名のみを必要とし押印は不要となっています。
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